京都大学大学院エネルギー科学研究科 エネルギー基礎科学専攻
  高温プラズマ物性研究室(K-7)

京都大学エネルギー理工学研究所 (協力講座) - エネルギー生成研究部門/複合系プラズマ研究分野 - エネルギー複合機構研究センター/高温プラズマ機器学研究分野

研究紹介(一般)

 本研究室は、京都大学で発案され、発展と続けているヘリカル型プラズマ核融合実験装置(ヘリオトロンJ)を用いた研究を推進しています。
 研究スタイルは、実験を主軸とし、理論やシミュレーションの技法を取り入れながら行います。具体的な分野は、プラズマの閉じ込め・加熱・計測など多岐にわたります。

プラズマとは

プラズマとは

 プラズマとは、電子と正イオンがほぼ同価数存在(電気的に準中性といいます)し、集団運動をしている状態です。固体・液体・気体に続く物質第4の状態で宇宙の既知の物質のうち99%以上はこの状態にあります。日本では電離気体(ionized gas)、中国では等離子体ともいわれています。

 プラズマをつくるためにヒーターで加熱するのは効率がとてもわるいので、加速された電子や高エネルギーの光子を気体に衝突させます。

水素原子

 中学理科、高校物理で学ぶ「真空放電」のうち、ガラス管壁からの蛍光がなく、管中の希薄な気体が光っている状態が電子衝突によるプラズマ生成です。現代の用語では「低圧グロー放電」といいます。

低圧グロー放電

核融合とプラズマ状態

 アインシュタインの特殊相対性理論で質量がエネルギーであることがわかっています。そこで質量をエネルギーとして取り出すことができれば、それは資源になるといえます。
 「水素同位体の核融合反応により質量からエネルギーを取り出して発電に利用する」制御熱核融合は豊富な資源、小さな環境負荷、核拡散抵抗性などの観点で有用な将来のベースロード電源になり得ると考えています。その実現にはプラズマを磁場で高温高密度に閉じ込めるための研究が大きな役割を担っています。

原子核同士を融合させるには...

  1. 原子から電子をはぎ取る。
    そのために気体を電離させ,プラズマ状態にします(その時点で電子の温度は1〜10万度ぐらいになっています)。
  2. +(プラス)と+(プラス)の電気的反発力を超えてイオン同士を近づける。
    そのために激しく熱運動させます(プラズマをおよそ1億度に加熱する)

ことが必要です。そこで、プラズマを生成し、加熱をする物理研究、それを実現するための技術開発が必要となっています。

太陽は水素4つからヘリウムが生成する核融合反応でエネルギーを生み出しています。地上の核融合では、重水素と三重水素の核融合反応を利用するのが最も実現性の高いことがわかっています。

反応前と反応後の質量を比べたとき、軽くなっていれば、その分の質量エネルギーを運動エネルギーとして取り出せます。それを利用するのが核融合発電です。

ヘリカル軸ヘリオトロン方式によるプラズマ閉じ込め研究

 核融合発電の方法には、磁場閉じ込め方式とレーザー方式があります。磁場閉じ込め方式では、プラズマが「磁力線と仲が良い」性質を利用し、磁力線を閉じ込めることで、プラズマを閉じ込めようとするものです。ただし、プラズマをある領域に閉じ込めようとして磁力線を曲げると、プラズマの軌道と磁力線とがずれてきて、損失を起こしてしまいます。それを防ぐ工夫がなされた装置の代表的なものがトカマク型と、それから本研究室で推進しているヘリカル型です。防ぐといっても完璧ではないので、より効率的な閉じ込め方式、制御方法の研究が不可欠なのです。

 ヘリオトロングループでは、1990年代までは平面上の捻りのあるドーナツのようなヘリカル形状の装置で研究を推進し、このタイプの研究を牽引してきました。その成果は自然科学研究機構核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)へと発展しており、本グループも積極的に共同研究を進めています。

 一方、大学規模の研究として、より最適なヘリカル装置の開発が進んでいます。ドーナツが空間的にクネクネと上下に歪み、さらにデコボコのついた「立体磁気軸」装置が、実はプラズマにとっては「居心地のよい」磁場であることが理論的にわかっています。それを実現しようとしている磁場配位の1つが、1990年代に新たに提案した「ヘリカル軸ヘリオトロン装置」です。これまでのヘリオトロン装置(ヘリオトロンA からE) で得られた知見の蓄積と、最新の磁場研究とを駆使して開発したヘリオトロンJ装置を用いた研究・教育を推進しています。

プラズマとヘリカルコイル

 プラズマの研究は、その粒子的な特徴が強く現れる側面においては個々の粒子のエネルギー分布や磁場中の軌道などがターゲットとなります。一方、流体としての性質が色濃く現れる側面では不安定性や乱流現象を見出すことがテーマとなります。
 当研究室では、そのような複合的な側面をさまざまな計測によって可視化したり、シミュレーションで再現したりして解明します。さらには、磁場構造や加熱、粒子補給の諸条件を外部から積極的に変化させプラズマの粒子や光、波動の応答を観測し、制御することにより、プラズマの閉じ込め性能の向上を目指します。
 ぜひ一度実際に装置見学においでください。お待ちしています。

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