京都大学大学院エネルギー科学研究科 エネルギー基礎科学専攻
  高温プラズマ物性研究室(K-7)

京都大学エネルギー理工学研究所 (協力講座) - エネルギー生成研究部門/複合系プラズマ研究分野 - エネルギー複合機構研究センター/高温プラズマ機器学研究分野

研究紹介(専門)

本ページでは、本研究室における学術的成果からピックアップして紹介いたします。

01: ヘリオトロンJにおけるプラズマ診断のための不純物スペクトル計測

 プラズマからの発光は、不純物発光種の同定だけでなく、適切な励起・発光のモデリングを適用することによって、電子密度や電子温度等の励起源の情報を得ることができる。本研究では、写真レンズを用いた可視光低分散回折格子分光器を用いて可視領域のスペクトルを、不等間隔フラットフィールド回折格子を用いた真空紫外(VUV)分光器[1]を用いてVUVのスペクトルを観測し、プラズマモニタリングとして利用可能な輝線の特定および様々なプラズマのパラメータ計測への応用を目的とする。

 図は固体燃料ペレット(水素)をプラズマ中に入射したときのVUVスペクトル強度の時間変化である。ペレットを入射した瞬間は、プラズマが急激に冷却されるため、もともと高い電離状態にあったものが再結合によって価数が低下し、電離レベルの低い不純物輝線が発光すると解釈できる。やがて、温度が回復してくるに従い、価数の高い不純物イオンの発光が観測される。
このように、複数の価数のイオンを測定することの有用性が示されている。

図:ペレット入射実験(#68550)におけるVUV領域の特徴的な輝線スペクトル強度の時間変化。

図  ペレット入射実験(#68550)におけるVUV領域の特徴的な輝線スペクトル強度の時間変化。
(門,白波瀬(学生),大石(共同研究者)

参考文献

  1. H. Kawazome, doctor thesis/dissertation, Kyoto Univ. (2004).
  2. 白波瀬一樹,修士論文(京都大学エネルギー科学研究科,2017年2月).

02: Nd:YAGレーザーをもちいたトムソン散乱計測法によるプラズマ電子温度密度分布計測

磁場閉じ込め型核融合装置による核融合エネルギー実現のためには、プラズマの基本量である温度と密度を計測することが不可欠である。そのために、高繰り返し発振が可能なNd:YAGレーザーをもちいてトムソン散乱計測法によるプラズマ電子温度密度分布の時間発展計測を行っている。

図は、プラズマ中に電子内部輸送障壁が形成された時のプラズマ分布の計測結果である。通常のプラズマ(青丸)に比べて電子内部輸送障壁が形成されたプラズマ(赤丸)はプラズマの中心領域で電子温度が800eVから1500eVまで上昇している。これはプラズマの磁気軸上を電子サイクロトロン波加熱を行うことによって、プラズマ中心部に電子ルートによる正の径電場を生成し、その電場や電場のシアにより閉じ込めを改善することができたためである。

“図:電子内部輸送障壁形成時のNd:YAGレーザートムソン散乱計測による電子温度分布計測 電子内部輸送障壁形成時のプラズマは赤丸、通常のプラズマは青丸で示している”

図:電子内部輸送障壁形成時のNd:YAGレーザートムソン散乱計測による電子温度分布計測 電子内部輸送障壁形成時のプラズマは赤丸、通常のプラズマは青丸で示している(南)

参考文献

  1. "Characteristics of electron internal transport barrier in Heliotron J" , N Kenmochi, T.Minami, C Takahashi, S Mochizuki, K Nishioka, et al., Plasma Phys. Control. Fusion 59 (2017) 055013.

03: 高温プラズマ中に形成される乱流や様々な揺らぎの研究

身近な日常から太陽などの天体まで、乱流をはじめ様々な揺らぎが自然界において存在する。何らかの物理量の勾配がある時、それに起因する揺らぎが生じ、揺らぎはその勾配を緩和する。磁場で閉じ込められた超高温プラズマにおいても様々な揺らぎが生じ、物理量を緩和、つまりは閉じ込めを悪化させるはたらきをする。プラズマの揺らぎや乱流を計測しその特性を理解することが、閉じ込めの物理を理解することに必須である

ヘリオトロンJの閉じ込めを理解するために、乱流や揺らぎの計測を行うと同時に、揺らぎを計測するための計測器の開発、揺らぎのデータを解析するための手法の研究を行っている。

“図:ビーム放射分光計測器で計測した高速イオン励起不安定性の非線形構造発展”

図:ビーム放射分光法で計測した高速イオン励起不安定性の非線形構造発展(大島)

参考文献

  1. "Edge plasma responses to energetic-particle-driven MHD instability in Heliotron J" , S.Ohshima et al., 2016 Nucl. Fusion 56 016009
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