京都大学 エネルギー理工学研究所ヘリオトロンJ プロジェクト

基盤施設型共同研究

基盤施設型共同研究への参画

核融合科学研究所は、国内外の大学・関連研究機関の施設を研究プラットフォームとして共同利用する共同研究を、コミュニティの要望に合致するかたちで研究所が主導的に設ける、あるいは支援することを目的とし、2025年度より、双方向型共同研究と一般共同研究ネットワーク型研究を統合・改革し、核融合開発共同研究を含む以下の4つのカテゴリーで構成される所外施設利用共同研究を設置しました。

  • 基盤施設型共同研究
  • 核融合開発共同研究(2024年度より実施中)
  • 課題提案型共同研究(一般共同研究ネットワーク型研究を統合する)
  • 研究コア提案型共同研究

エネルギー理工学研究所はヘリオトロンJを研究プラットフォームとして基盤施設型共同研究(2025-2027年度)に参画しています。


非対称磁場によるリミットフリープラズマの達成

核融合プラズマは発熱(あるいは入熱)と損失が均衡して維持される非平衡状態にあります。このようなプラズマではしばしば"リミット"が現れます。入力を操作しても密度やベータ値がある閾値よりも上がらない、分布の形が変わらない、などの現象が観測されています。このような"リミット"は核融合炉の設計の自由度を大きく下げます。そこで、本研究では"リミット"を理解し、制御することで"リミットフリー"プラズマを達成することを目指します。プラズマに"リミット"が無くなれば炉の設計の自由度が上がり核融合炉の早期実現やコスト削減につながります。

リミットを知る

リミットの原因となる様々なプラズマ不安定性にはプラズマを閉じ込める磁場構造が強く関連しています。ヘリオトロンJの磁場構造は準iso-dynamical 配位と呼ばれ、トカマク磁場構造のような対称性は無く、かつ磁気軸が同一平面上に無い、という独特な特徴を持っています。このような特徴が不安定性の安定化に効くと言われていますがまだ検証されておらず、ヘリオトロンJに"リミット"が存在するかどうかはまだ明らかになっていません。このためまずは、ヘリオトロンJの"リミット"をサーベイする実験が必要になります。

リミットを理解する

なぜプラズマに"リミット"が現れるのでしょうか?力の均衡のような考え方だと一旦不安定になって均衡が破られると大変動が起こりそうです。プラズマの場合はプラズマは消失して無くなってしまいます。ある点で不安定となる事を"リミット"に達した、と言えます。一方で、大変動が起こらない場合もあります。不安定によるプラズマの変動が新たな不安定性を生じ、これが最初の不安定性と競合するような場合、不安定だけど変動が起きないような状態になる事があります。このような状態になると状態が固定されて自由に状態を選べなくなります。これも"リミット"のひとつです。実際、プラズマはあるのになかなかそのプラズマの状態を動かせない、というタイプの"リミット"は度々現れます。このような"リミット"を非平衡系における多数の秩序間の競合・共存過程として理解する事が重要と考えています。

リミットを予測する

"リミット"の理解により"リミット"の予測が可能になれば、それを避ける事が可能になります。特に"リミット"と磁場構造の関係は重要です。"リミット"が無い、または我々が欲しいプラズマの範囲からは"リミット"を追い出せる磁場構造が存在すれば"リミットフリー"プラズマを達成できます。ただ"リミット"の理解が方程式のような形では得られない場合も考えられます。また、大変動を伴うような"リミット"現象は確率論的で決定論的な予測が困難な可能性もあります。そのような場合は実験データベースからAIに最適パラメータや現象の変革点を探してもらう事が考えられます。

リミットを制御する

最適磁場配位が存在すれば"リミット"フリーな状態にできる可能性があります。ただプラズマの最終状態が"リミット"フリーであっても、そこに辿り着く道程に"リミット"があると、一旦"リミット"に陥ったプラズマはそこから動けなくなります。"リミット"によってなかなかその状態を変えることのできない時、プラズマの状態を変えるにはどうすれば良いか?金属材料の分野では焼きなましや焼き入れなどの手法で材料の状態を変えています。ここから外部操作の速度もパラメータになるという着想が得られます。核融合プラズマではペレット入射で"急激に"密度を上げる、温度を下げるなどの手法が考えられます。

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