研究内容
溶融塩を用いたエネルギー・機能性材料の製造法やリサイクル法の開発
液体亜鉛陰極を用いた溶融塩電解法によるシリカからの太陽電池級シリコン製造
溶融塩電解と合金隔膜を用いたスクラップ磁石からのRE金属の新規な電気化学的リサイクル法
溶融塩電解を用いたチタンめっき法の開発
チタンやチタン合金は、高い耐腐食性や耐熱性、比強度といった優れた特性を有し、航空機や化学プラント、スポーツ道具から生体インプラントなどに使われています。現在法では生産コストが高く、製錬や加工が難しいことが、広範な利用の妨げとなっています。チタンやチタン化合物の高耐食性や高強度等の特性を利用する方法として、基板の表面にチタンを製膜する手法もあり、大きな期待を集めています。我々は、複雑な形状の基板にでもチタンを成膜できる方法として、溶融塩中でのめっき法を開発しています。

参考文献
[1]Yutaro Norikawa, Kouji Yasuda, Toshiyuki Nohira, Journal of the Electrochemical Society, 166(14), D755–D759 (2019).
[2]Yutaro Norikawa, Kouji Yasuda, Toshiyuki Nohira, Electrochemistry, 86(2), 99–103 (2018).
溶融塩を用いたタングステン電析
タングステンは高融点、高耐熱性、低熱膨張率といった優れた特性を持ち合わせており、切削工具やフィラメント、ヒートシンクなどに用いられています。しかし、加工性が悪いためその利用方法は制限されています。そこで、加工性の良い金属基板上にタングステンをめっきすることにより、タングステンの応用範囲を拡大させることができます。我々は、タングステンめっきの作製方法として、溶融塩電解法に着目し、高品質な電析膜が得られる条件を検討しています。

溶融塩電解還元法を用いたシリカからの太陽電池級シリコン製造
結晶系シリコン太陽電池は、高効率、高耐久性、無害、豊富な資源量といった特長を有することから、現在最も普及している太陽電池であり、将来の大量普及に際しても主役として期待されています。結晶系シリコン太陽電池には、高純度のシリコン(99.9999%以上)が必要であり、現在は半導体用シリコンと同様の方法でも製造されています。しかし、この方法では大幅な低コスト化が難し く、新たな太陽電池級シリコン製造法の開発が求められています。シリコンからリンやホウ素などの不純物を除去することは大変困難ですが、シリコンの原料であるシリカ(SiO2)の段階であれば比較的簡単に除去できることに注目し、高純度化したシリカをそのまま高純度シリコンへ還元する溶融塩電解法を研究しています。

参考文献 [1]Toshiyuki Nohira, Kouji Yasuda, Yasuhiko Ito, Nature Materials, 2, 397-401 (2003). [2]Ming Zhong, Xiao Yang, Kouji Yasuda, Takayuki Homma, Toshiyuki Nohira, Metallurgical and Materials Transactions B, 49(1), 341–348 (2018).
溶融塩電析法を用いた太陽電池用シリコン膜の製造
現在の結晶系シリコン系太陽電池は、シーメンス法で作製したシリコンをチョクラルスキー法で結晶塊とし、100–200 μm程度の厚さに切断することで作製されています。しかし、切断工程におけるカーフロス(切りしろロス)が大きいという課題があり、その後のセル製造工程も複雑です。我々は、新規な太陽電池製造法として、溶融塩電析法により、基板上に直接結晶性シリコン膜を製膜する方法を提案し、開発しています。現在は、シリコン膜の品質向上や原料としてSiCl4を用いることに取り組んでいます。

参考文献
[1]Kouji Yasuda, Kazumi Saeki, Tomonori Kato, Rika Hagiwara, Toshiyuki Nohira, Journal of the Electrochemical Society, 165(16), 825–831 (2018).
[2]Kouji Yasuda, Kazuma Maeda, Rika Hagiwara, Takayuki Homma, Toshiyuki Nohira, Journal of the Electrochemical Society, 164(2), D67–D71 (2017).
液体亜鉛陰極を用いた溶融塩電解法によるシリカからの太陽電池級シリコン製造
太陽電池級シリコンの新規製造法として、溶融CaCl2中で液体亜鉛陰極を用いた固体SiO2の電解還元を提案しています。この手法を用いた太陽電池級シリコン製造プロセスは下図に示すように、 (1)電解工程:液体Zn陰極を用いた固体SiO2の電解還元、(2)析出工程:液体Si–Zn合金から固体シリコンへの析出、(3)精製工程:析出シリコンからの太陽電池級シリコンインゴットの作製、から構成されます。陰極に液体Znを用いることで電解セルからの回収が容易であり、連続生産と純度コントロールが期待できます。また、液体Si–Zn合金からシリコンを析出させる際に、偏析により不純物がZn側に残留し、シリコン中の不純物を効果的に除去できます。

参考文献 [1]Kouji Yasuda, Takeyuki Shimao, Rika Hagiwara, Takayuki Homma, Toshiyuki Nohira, Journal of the Electrochemical Society, 164(8), H5049–H5056 (2017). [2]Yuanja Ma, Akifumi Ido, Kouji Yasuda, Rika Hagiwara, Takayuki Homma, Toshiyuki Nohira, Journal of the Electrochemical Society, 166(6), D162–D167 (2019).
溶融塩電解と合金隔膜を用いたスクラップ磁石からのRE金属の新規な電気化学的
リサイクル法
Dy添加ネオジム磁石は、電気自動車用高機能モーター等の幅広い用途に利用されていますが、地域偏在性が高い重希土類元素であるDyの安定供給に懸念があります。そこで、当研究グループでは、効率的なリサイクル法として、合金隔膜と溶融塩電気化学プロセスを用いたスクラップ磁石からの希土類(RE)元素の分離・回収プロセスについて研究を進めています。現在は、隔膜材料として、耐久性に課題のあるNi金属に代わる材料の探索を行っています。

溶融塩を用いた新規ダイヤモンド合成法
ダイヤモンドは優れた物性を多く有しており、宝石としてだけではなく、切削工具や半導体といった工業材料として大きな注目を集めています。しかし、天然ダイヤモンドの産出量は極めて少なく、現在実用化されているダイヤモンド合成法はコストが高いという課題があります。この課題を解決すべく、当研究室では、新規なダイヤモンド合成法として、常圧液相合成である溶融塩電解合成法について検討を行っております。

イオン液体共存下での木質バイオマスからのバイオエタノール高効率生産
化石燃料の枯渇問題や、地球温暖化問題を解決する1つの方法として、バイオエタノールが注目されています。その中でも特に、食糧供給とは競合しない木質バイオマスからのバイオエタノール生産が期待されています。木質バイオマスの主成分であるセルロースは結晶性が高く、高効率で単糖へ加水分解することが難しいという問題があります。そこで、イオン液体を用いてセルロースの結晶性を低下させて加水分解を行い、その後の発酵過程においても、イオン液体が酵母の生育を阻害することなく発酵できるような系の確立を目指し、研究を進めています。

イオン液体電解質を用いた新規二次電池の開発
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、天候によって発電量が大きく変化するため、大量導入すると電力の安定供給に問題が生じます。そのため、昼間に余った電力を大型蓄電池に蓄えておき、夜間に使用するなどの方策が必要です。大型蓄電池の候補としては、現在小型電子機器用電源として普及しているリチウム二次電池が挙げられますが、資源が希少かつ偏在しているコバルトやリチウムを使用しており、さらに可燃性・揮発性のある有機溶媒系電解液を用いるため、将来的な大型蓄電池の大量導入には資源面・安全面ともに課題があります。そこで、これらの課題を解決可能な新しい蓄電池の開発が期待されています。 当研究室では、ナトリウムやカリウムなどの豊富な資源を用い、電解質には難燃性・難揮発性で高い安全性を有するイオン液体を利用した、新規蓄電池の研究を行っています。例えば、下図に示すように、正極にカリウム系層状化合物、負極に炭素材料を用いてカリウム二次電池を構築することが出来ます。これまでに、有望なカリウム二次電池用イオン液体電解質を複数開発しており、現在は、これらの電解質と様々な電極材料を組み合わせて電池特性を調べ、性能向上に向けた取り組みを行っています。

参考文献 [1] T. Yamamoto, K. Matsumoto, R. Hagiwara, T. Nohira, The Journal of Physical Chemistry C, 121, 18450–18458 (2017). [2] T. Yamamoto, T. Nohira, Chemical Communications, 56, 2538–2541 (2020).