エネルギー基盤材料研究分野

エネルギー機能変換研究部門 エネルギー基盤材料研究分野
准教授:森下 和功 助教:藪内 聖皓 教授(兼):松田 一成
ナノ・メゾ構造制御による革新的な性能向上と、機能発現を目指すエネルギー基盤構造材料の開発研究や、極限環境下における材料挙動予測のための材料・システム統合基礎研究を行っています。

材料照射プロセスのマルチスケールモデリング

 地球環境にやさしいエネルギー源として、現在、核融合炉発電所の開発研究が国際協力によって行われています。とりわけ材料の問題は重要です。これは、放射線照射という過酷な環境にあっても丈夫であり続ける材料をいかに開発するか、材料の健全性に基づく核融合炉システムの安全をいかに確保するか、という問題です。このような問題を克服するには、既存の照射場(核分裂炉やイオン加速器など)を使った材料照射データを整備するとともに、実際の核融合炉環境下での材料挙動を予測するための方法論が必要です。そこで、時間的も空間的にもマルチスケールな現象である材料照射損傷プロセスを物理的に正しく理解し、その上でそれらを予測・制御するための方法論の開発を行っています。

放射線照射による材料内の損傷プロセス

着目している時間・空間スケールごとに、照射損傷プロセスは多種多様な姿を見せます。このような現象を正しく理解するには、さまざまな数値シミュレーション手法や実験評価手法を相補的に活用することが必要です。

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核融合炉材料に関する研究開発

 次世代のエネルギー源として期待される核融合炉の実現に向け、ブランケットおよびダイバーターをターゲットとした材料の研究開発を行っています。核融合炉の実現のためには、プラズマの制御もさることながら、超高温のプラズマに耐えうるプラズマ対向材料の開発が必要不可欠です。プラズマ対向材料は、プラズマからの非常に高い熱流束と中性子等の粒子線照射という極限環境下においても、その健全性を保つことが求められます。特に中性子等の高エネルギー粒子線による材料劣化(照射脆化)は、核融合炉ブランケットの寿命に関わる重要な事象の一つで、炉設計や経済性を検討する上で高精度の劣化予測が求められます。残念ながら14MeV の核融合炉プラズマを利用した照射脆化の研究が世界的にも困難であるという背景から、我々はイオン加速DuET を用いて照射脆化に関する研究を行っています。特にDuET は重イオン照射に加えてHe イオンを同時に照射することが可能なため、より核融合炉環境に近い状況下での実験が可能となっています。我々は、様々な国内・国外のプロジェクトに参画し、核融合炉実現に向けた研究開発を進めています。

材料科学に関する基礎学理の探究

 材料に起こる様々な事象や特性の変化には、材料中に含まれる格子欠陥が大きく寄与しています。イオン加速器は材料中に強制的に過飽和な格子欠陥を導入する手段として昔から注目されており、近年の材料科学の発展に大きく寄与してきました。我々は核融合炉材料にとどまらず、材料科学全てに共通する基礎学理を探求するため、イオン加速器を用いて、格子欠陥に関する様々な研究を行っています。また、そこで得られた知見に基づくナノ・メゾ組織制御により、材料の高性能化や新機能付与を目指しています。

イオン加速器を用いて材料中に導入した空孔集合体と転位との相互作用について、実験と計算機シミュレーションの比較。

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