岸本泰明所長挨拶(2017年)

kishimoto_yasuaki.jpg 私達人類の生存と活動を支える様々のエネルギーやそれらを生み出す物質は、138億年前とされる宇宙の誕生、その後の太陽や地球、そして生命の誕生を含む、時には偶然としか思えない自然の巧妙で精緻な営みの中で作られたものであることが最近の研究から分かってきています。それらのことを考えると、 エネルギーや物質の生い立ちや、そこに潜む巧妙な自然のメカニズムなどを深く理解するとともに、それらを規範として、 「質」と「量」の双方にすぐれた21世紀の安全なエネルギーの姿を追求することが求められているように思います。

 エネルギー理工学研究所は、このようなエネルギーの在り方や生産・利用の仕方を自然の摂理や基本原理まで立ち返って研究し、次世代を担う新しいエネルギーの学理とそれを先導・実現する先端技術の創出を目指して1996年5月に設立されました。具体的には、エネルギーを生成・変換・利用の要素に分類し、それぞれを研究する3部門14研究分野と、各研究分野を有機的に結合して、プロジェクト研究や学術性の高い研究課題に挑戦する附属エネルギー複合研究センターを設置し、これまで多くの研究成果を生み出してきました。また、研究交流の国際化を積極的に進めるほか、産学官連携を通して研究成果を社会に還元するとともに、大学院エネルギー科学研究科の協力講座を担当し、最前線の研究環境の中で学生教育と研究者育成を行ってきました。

 本研究所は、2011年から、研究所が目指すエネルギーの理念を「ゼロエミッションエネルギー」という言葉に込め、それを名称に持つ共同利用・共同研究拠点として、研究所の多様な資源を活用した幅広い学術分野との連携・協力とコミュニティ形成を推進してきました。この活動は、日本にとってエネルギーを深く考える機会になった東日本大震災と時を同じくして開始され、日本の復興・復旧と共に歩むことになりました。この間、本拠点の運営について皆様から多くのご支援とご協力を頂き、厚くお礼申し上げます。

 21世紀の今日、科学研究は世界的にも大きな変革期にあり、これからの飛躍的発展には異なる分野の融合が不可欠とされています。これは、織物の美しい文様が異なった縦糸と横糸の交差から生まれるのに似ています。しかし、分野の融合は決して容易なことではなく、限られた研究所員だけで達成できるものではありません。絶えず新しい知識や人材を外部から取り入れ、そこでの活発な議論や活動を通して新しい考えを創出・実現して社会に送り出し、それが新たな価値を伴って研究所に戻ってくる、そのような"循環"の中ではじめて達成されると考えます。世界的にも、様々な概念や技術のイノベーションを取り入れたエネル ギー研究が急速に進展する中、何を選択し、何を目指すのか、研究所の真価が問われます。それを心に留めて、所員一同、既存の手法や概念にとらわれることなく知恵を積極的に出し合い、社会の大きな循環の中で議論を尽くして、21世紀にふさわしい新しいエネルギー理工学の基軸を築いていく所存です。皆様の一層のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2017年4月
岸本泰明

2017年4月~2021年3月

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