岸本泰明所長挨拶(2013年)

kishimoto_yasuaki.jpg 目覚ましい科学の発展は活力ある社会を創出する一方、地球環境や生態系への負荷など多くの問題も引き起こしています。その背後に「エネルギー」が大きく関わっていることは言うまでもありません。あらゆる事象が多様化する21世紀社会は、量としてのエネルギーが求められる一方で、エネルギーの生産や利用の仕方(質)そのものが強く問われる時代であり、これら質と量の両者を満たして初めて調和ある豊かな発展を実現することができます。

 エネルギー理工学研究所は、このエネルギーの在り方を調和した自然の摂理や原理まで立ち返って謙虚に探求し、それらを規範に新しいエネルギーの学理と先進技術の創出を目指して、1996年5月に設立された研究所です。具体的には、エネルギーの生成、機能変換、利用過程に関わる3部門12研究分野と、これらを結合してプロジェクト研究や国内外との共同研究を推進する附属エネルギー複合機構研究センターを配置し、これまで多くの研究成果を生み出してきました。また、産学官連携を進め研究成果を社会に還元するとともに、大学院エネルギー科学研究科の協力講座を担当し、最前線の研究活動を通して学生教育と研究者育成を行ってきました。

 2011年3月に発生した東日本大震災は、科学・技術とエネルギーの在り方を根本から問いかける出来事でした。時を同じくして2011年度から、本研究所は文部科学省から認定を受けた「ゼロエミッションエネルギー研究拠点」としての共同利用・共同研究拠点活動を開始しました。これは「有害物質を放出しない環境調和性の高いエネルギー」を目指すものですが、「自然を深く理解すれば、ゼロに近い微小なエネルギーでも系に大きな質的変化をもたらし、それを通して高品位のエネルギー生成や変換・利用を実現することができる」という挑戦的な意図も含むと考えています。

 実際、生体系は少ないエネルギー消費で高度な機能を達成しています。これを規範に、ナノ工学やバイオ技術、光・量子技術を融合させ、新機能材料や新薬の創製、現存技術の原理限界を超える太陽光エネルギーの基礎研究を推進しています。他方で、太陽を規範に、このエネルギーを地上で実現するプラズマ・核融合研究を展開しています。近年プラズマは多彩な構造を自ら形成する自律性の高い媒質であることが分かってきました。この特性に着目したヘリカル系核融合や光量子源などの応用研究を進めています。また、幅広いエネルギー基盤を支えるため、極限環境で耐える構造材料や物質挙動の研究、社会受容性の高いエネルギー利用システムの研究にも力を注いでいます。これら多様な研究の深化と融合を通して、21世紀に相応しいエネルギー理工学の構築とパラダイムシフトを目指す国際拠点としての役割を果たしていきます。

 所員一同、これまでの既成概念にとらわれることなく、他分野との連携・融合を積極的に推進し、途切れることのない知の循環を範として研究活動と運営を展開して行く所存です。

皆様の一層のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2013年4月
岸本泰明

2013年4月~2015年3月

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